綿飴と水飴

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140字にまとめられない好きな音楽のこと

『ノンフィクション』フジファブリック - CHRONICLE

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 フジファブリックが2009年5月にリリースした4thアルバム「CHRONICLE」。当時フロントマンで今作の収録曲を全て作詞作曲した志村正彦の最後の作品である。

 

 

CHRONICLE

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1. バウムクーヘン

2. Sugar!!

3. Merry-Go-Round

4. Monster

5. クロニクル

6. エイプリル

7. Clock

8. Listen to the music

9. 同じ月

10. Anthem

11. Laid Back

12. All Right

13. タイムマシン

14. ないものねだり

15. Stockholm

 

 

フジファブリック史上最高にロックでポップなサウンド

 今作はフジファブリック史上最高にロックでポップでダークで女々しくて捻くれてるアルバム」であると思っている。

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 これまでのプログレ、ハードロック要素なんかもある引き出しの多い変幻自在なバンドという印象はほとんど無い。少し香る曲はあるが。

 

 2nd→3rdでもポップ化して当時は賛否両論だったらしいけど今回はその差以上である。

 

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 プロデュースにスウェーデンパワーポップバンドThe Merrymakersを起用。レコーディングもスウェーデンストックホルムで行なったらしい。それもあり、パワーポップ化している。しかもほとんどがそれで構成されている。

 

 #1「バウムクーヘン」からいきなりそれが分かる。

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 キラキラポップでいて力強いギターリフ。キュンキュンするだろ。

 

言葉では伝えられない 僕の心は臆病だな
怖いのは否定される事 僕の心は臆病だな だな

 

 

 平常運転の変態チックな#3「Merry-Go-Round」

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 見どころは志村氏の奇声シャウト。

 

 この曲もパワーポップを全面に出している。

 

 

  #12「All Right」は志村のシャウトが気持ちの良いノリノリゴリゴリロック。

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 Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 ここまで力強いゴリゴリな音はこれまでのフジファブリックにはなかった音である。めちゃくちゃロック。気持ちのいいくらいにストレート。

 

 

 ということで「ロックでポップ」なのは分かったが残りの「ダークで女々しくて捻くれてる」というのは何のことかというと詞である。

 

 

人間味溢れる「ダークで女々しくて捻くれてる」詞

 志村本人が「詞は全てノンフィクション」と語っているだけに、歌詞は「悩み」「後悔」「葛藤」「妄想」など人間味に溢れかえっている。しかもかなりストレートに。

 

 

 #5「クロニクル」、#6「エイプリル」、#7「Clock」。この流れはズルい。

 

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描いていた夢に 描いていた夢に

近づけてるのかと 日々悩むのであります

君は僕の事を 僕は君の事を

どうせ忘れちゃうんだ そう悩むのであります

 

 

 

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どうせこの僕なんかにと ひねくれがちなのです
そんな事無いよなんて 誰か教えてくれないかな

 

 

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夢が覚めたらまた ひとりぼっち
また戻って 仕方ないないないや
捨てちゃいけないもの 捨ててしまったんだ
また拾って 仕方ないないないや

 

 

 悩み過ぎ。女々しいなぁほんと。しゃきっとしろ。泣くな。

 

 けど何か特別なことを歌ってるわけじゃない。誰しもが日常で感じるような普遍的なことばかり。だから共感できるというか見透かされてるような気がする。でもここまでストレートに包み隠さず歌詞を書ける人はそうそういない。

 

 このアルバムに関してのインタビューで志村は次のように語っている。この通りである。

 

 ーー「ぼくのイメージでは……恥ずかしいんですけど、男泣きしながら、それでも笑いながら、『しかたね〜んだけど、生きていくぞ』っていう思いを、ロックンロールというツールを使って吐き出してるっていう感じですね。」

 

 ーー「僕と同じように満たされない境遇にいる人たちが共感してくれたら、僕がここまでのものを吐き出した労力は報われるんじゃないかなって思いますね。」

 

 ーー「最近は、人生最高、生まれてきて良かった、1億人のなかの君と出会えて幸せだっていう曲が世の中のスタンダードとされているじゃないですか。それは全然悪いことではないんですけど、僕の場合は、まだ身の丈が合ってないのか、そこには共感できないんですね。それよりも、自分の弱いところやネガティヴなこと……ネガティヴと言っても悪い意味ではなくて、誰しもが感じるちょっと後ろ向きなことを楽曲にしたいなって思ったんですよ。」

 

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 ーー「ほんとにね、作り終えるまでは死ねないっていう使命感があったんですよ。ストックホルムでは、このアルバムに関わった全員が、「この作品を最高のものにする」っていうことだけしか考えてなかった。」

 

 その言葉通りなのか無事今作を完成させリリースをした7か月後の12月24日、世間がクリスマス一色に染まる中、志村正彦は突然この世を去る。

 

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フジファブリックは死んでなんかいない

 今作を「1stアルバムのつもりで作った」と語った志村は今後どういう曲を作っていこうとしていたのかは分からない。

 

 しかし残されたメンバーは現在も活動を続けている。

 

 再出発の(実質)最初のアルバムの表題曲「STAR」。

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 声は変わってしまったが”フジファブリック”である。今作を踏襲している。生まれ変わったわけじゃなく、今もなお生き続けている。

 

 現在も精力的に活動をしていることで筆者はフジファブリックに出会えた。言葉に表せれないほど感謝しているし、今後も応援していく所存である。

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 ミュージシャンが亡くなると神格化されて過大評価になってしまうなんてのはよくある話で、フジファブリック志村正彦にもそれは多少あるのかもしれないし、自分の内面を存分に曝け出し、そのまま死んでいってしまうなんて出来過ぎてるかもしれない。

 

 

 それでもこの「CHRONICLE」に出会えたことは、君のいない今日も人生でかけがえのないものであり続けています。

 

 

 #14「ないものねだり」 

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気持ち伝えるのに いつも人は何故に
これほどまでに悩むのでしょう

あなたはいつの日も 例えば雨の日も
僕を悩ませるのでしょう

 

 

 

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