”汽空域の世界” サカナクション - kikUUiki
「何か難しい」
というのが前作「シンシロ」と次作「DocumentaLy」を一通り聴いた後にこの「kikUUiki」を聴いたときの印象だった。
その2作は分かりやすい勢いのある曲が揃っている取っ付きやすいアルバムだったので筆者もすっかりハマってしまった。
パンチ力。
- アーティスト: サカナクション
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2009/03/04
- メディア: CD
- 購入: 6人 クリック: 87回
- この商品を含むブログ (127件) を見る
パンチ力2。
サカナクション
サカナクション(英: Sakanaction)は、2005年に結成された日本のロックバンド。バンド名は「魚」と「アクション」の単語を組み合わせた造語。(Wikipediaより引用)
前作の延長線上のような冒頭
山口一郎氏の「汽空域の世界」という一言で締めくくられるイントロ#1「intro = 汽空域」からも分かるように今作のタイトル「kikUUiki」は「汽空域」のことであり、淡水と海水が混じり合う「汽水域」をもじった造語。
汽水域(きすいいき)とは、河川・湖沼および沿海などの水域のうち、汽水(Brackish water)が占める区域である。 漢字の「汽」は「水気を帯びた」という意味を含蓄し、「汽水」は淡水と海水が混在した状態の液体を指す用語である。(Wikipediaより引用)
その後#2~#4は鮮やかなシンセの音とブイブイなベースが特徴的な前作「シンシロ」に通ずるような楽曲が連なる。しかし、前作より何となく勢いがないためここで聴くのをやめてしまう人も多いとか少ないとか。
#4「アルクアラウンド」。アレですアレ。
ファンでない一般リスナー的には今作は「アルクアラウンド」が収録されているアルバムくらいにしか認知してないかもしれない。実際に筆者もそうだったので。さすが策士一郎、シングル曲は分かりやすいものを持ってくる。
続くのは「アルクアラウンド」に負けないパンチ力のあるノリノリなギターロック#5「Klee」。ここでダンスミュージック要素を一気に排除。違和感がスゴい。
だからクレーの絵を見て 落ち込むのは
僕が擦れたから 擦れたからか
そしてインスト曲#6「21.1」と、流れ的には前作と同じ。
汽空域の世界
インスト曲からの流れを汲む暗くてフワフワした#7「アンダー」に続き、静から動へと移り変わる圧巻の後半が印象的な#8「シーラカンスと僕」と何やら忙しい雰囲気。
その流れに沿うようにダンスビート炸裂の#9「明日から」、#10「表参道26時」と本当に忙しい流れ。
振り幅が広く難解な曲構成。前作がダンスミュージック要素ドカーーンだったのに対してこれ。
そりゃとっつきにくいわけだ。色んなものが混じっている汽空域ってのはこういうこと。
「シンシロ」のときはある程度戦略もあって、サカナクションを知ってもらうためにあえてクラブミュージック的な切り貼りの要素、ループの楽しさだったりを表現していた部分はあったんですよね。
そして本編最後の曲と言っていい#11「壁」。アコギのアルペジオから徐々に壮大なバンドサウンドへという圧巻の展開。これで終わっても文句無し。もう十分。
目が明く藍色
とか言ってたらこの曲が始まるわけですよ。これがとんでもない。
個人的にサカナクションで1番好きな曲。ダントツで。ぶっちぎり。
そういう混ざり合わないものを混ぜていくっていうテーマで作っていったんですよね。そして、その全てを網羅して支えてる曲が「目が明く藍色」っていう1曲。これが1曲で「kikUUiki」を語り尽くしてるし、この曲がアルバムの最後のクライマックスにもなってるんです。
つまりこの曲が「kikUUiki」の集大成であり「kikUUiki」そのものであるということ。なんかカッコいいな。
構想9年というとんでもない大曲。展開は異質で難解ではあるけど客観的に聴くといたって普通な曲にも聴こえてきたりするこの違和感。
とりあえず聴いてみて。7分があっという間に終わると思う。
悲しみの終着点は歓びへの執着さ
藍色の空が青になる その時がきたら いつか いつか君の声を聴かせてよ ずっと
君の声を聴かせてよ ずっと ずっと
ここで毎回ゾワゾワする。鳥肌スダンドアップ。
最後に
バンドって方向性が定まらなかったり色々なことに手を出してよくわかんないことになることは多いんだけどそれを開き直って「混ぜちゃおうぜ!!」ってなるこの発想。そして「汽空域」というぴっっったりなワード。
パンチ力はないかもしれないけどなんかすごいぞこのアルバム。