綿飴と水飴

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140字にまとめられない好きな音楽のこと

桜も散ったし、フジファブリックの「桜の季節」を聴いてやるせなくなろうぜ

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4月も後半ですね、いかがお過ごしでしょうか。相変わらず花粉がスゴい。

 

さて桜もとっくに散ったわけですけどそんな今にピッタリな曲がフジファブリックの記念すべきメジャー1stシングル「桜の季節」。

和なピアノと浮いている鋭いギターのフレーズが印象的などこか掴みどころのない楽曲。

 

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イントロからガッとやられる。これは今も変わらずフジファブリックの特徴である。

そして「桜の季節」は次の歌詞から歌いだされる。

 

桜の季節過ぎたら遠くの町に行くのかい?
桜のように舞い散ってしまうのならばやるせない

 

「桜」が曲名に入る曲は日本に数知れずあるけどそれらはだいたい春真っ只中をイメージさせるようなものが多い。まぁそりゃそうよね。

 

「桜の季節」と言われたら3月末~4月頭の年度末から年度初めの出会いや別れの春を指す。しかし志村は「桜の季節 過ぎたら」と歌いだす。

桜の季節を上記の通り3月末~4月頭という解釈で行くと、別れのシーズンが去った後である4月中旬以降のことを歌っていると言える。

 

その町にくりだしてみるのもいい
桜が枯れた頃 桜が枯れた頃

 

春に別れて遠くの町に行った「誰か」に会いに行くということなのだろうか。「くりだす」という曖昧な表現をするのは流石。こうやって聴く人の想像力を掻き立てるのは志村正彦の才能である。

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しかしそれは「桜が枯れた頃」である。葉が枯れる秋のことなのだろうか、少なくとも今ではない。それに、「くりだしてみるのもいい」と歌っている。くりだすと断言しているわけではない。くりだしちゃってもいいんだぜ?的なノリなのか。

 

坂の下 手を振り 別れを告げる 車は消えて行く
そして追いかけていく 諦め立ち尽くす 心に決めたよ

 

別れの瞬間。これは3月末~4月頭の回想だと推測できる。ここだけ「坂の下」や「車」など特定のものを挙げ、このシーンを想像しやすくしているように思える。

しかし何を「心に決めた」のかは分からない。

 

ならば愛を込めて 手紙をしたためよう
作り話に花を咲かせ 僕は読み返しては感動している!

 

「ならば」というくらいだから遠くの町に行った「誰か」に向けての手紙なのだろう。そしてその手紙に作り話を書くが、それを読んで感動するのは「誰か」ではなく「僕」。

 

この手紙は自分が読むだけで実際にポストに投函されることもないし、遠くの町に行ってしまった「誰か」に届くことも読まれることもないのである。最後の「!」が強がっているようにしか見えないのは僕だけだろうか。

そして、前の歌詞にあったようにその町にくりだすことも会いに行くこともないのである、きっと。

くりだそうと考えていた桜が枯れた頃とは「葉が枯れた頃=秋」ではなく、「木が枯れた頃ソメイヨシノの樹齢は60年」なのである。会いに行くつもりなんてない。

志村は桜の季節に別れた「誰か」にまた会いに行くことではなく、もう会わないことを心に決めたのである。

 

「別れの歌」といっても様々だが、この曲では一生の別れを後悔と妄想を交えながら歌っているように思える。会おうと思えば会いに行けるし、手紙を出そうと思えば出せるのである。でもそれはしないのである。なぜかは聞くな。

なぜか分かれば君もフジファブリックの、志村正彦の良さが分かるはずである。

 

やるせないなぁ

 

 

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