”コース料理が全部主食” Fear, and Loathing in Las Vegas - All That We Have Now
だったら嫌ですよね(唐突)
前菜からデザートまで全部主食なんて一見「別に良くね?」ってなりそうですけど僕らもうそんなに若かない。野菜も食べたいし。たまには新鮮な魚も食べたいんですよ。アニサキスが怖いけど。
音楽で同じことを言うとアルバムの収録曲がほとんどシングル曲で通用できるくらいボリューミーってことですよ。これも一見「別に良くね?」ってなるような気がするけど、ベストアルバムとか何回もリピートします?重くない?僕は重い。野菜食べたい。
とは言ったものの実際そんなアルバムはめったにない。完成度の高いものでもシングル曲ばっかり目立っちゃうなんてことは珍しくない。それは悪いことじゃないし、パンチの無い曲ばかり揃ってるアルバムでも「名盤」と称されるものもあったりする。やっぱりバランスって大事。箸休めな曲(≠捨て曲)も重要である。
でも、時々オリジナルアルバムでも度を越えちゃうものを作ってしまう空気読めないヤバいやつがいるんですよ、『(What's The Story) Morning Glory?』とか『(What's The Story) Morning Glory?』とか。実際に全曲シングルカットするって話もあったとかなかったとか言うくらいの化け物アルバム。この頃のノエルギャラガーは鼻歌を歌っただけでそれが名曲になったらしい。
レビューなんかで「捨て曲無し」という言葉(表現)が良くアルバムの誉め言葉としてあるのが腹立たしくて夜も眠れない。意味としては「アーティストが作品を完成させるために(埋め合わせのために)入れた(捨てるはずだった)曲が入って無い」という解釈だと思うんだけど、インタビューとかで「この曲はボツだったんですけど誰々には好評だったので作り直すことにしました。」なんてことを言ってたか、言ってなかったかじゃなくて、捨てた、捨てないってのは聴く側が判断しているわけで、結局その曲捨ててんのはテメェじゃねぇか。ハゲろ!
日本にもそんな空気の読めないアルバムがある。それが、Fear, and Loathing in 名前が長い Las Vegasの2nd『All That We Have Now』。タイトルからして全力感がスゴい。俺たちが今持っているすべて。こんな青春映画ありそう。主演は野村周平でいこう。
- アーティスト: and Loathing in Las Vegas Fear
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2012/08/08
- メディア: CD
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出だしの3曲ですでに疲労困憊で動けなくなる。10曲は聴いた気がするぞ、まだ10分しか経ってないの怖い。
これまでの3曲はシングルのB面だったりMVカットされてるものだったが、続く『How Old You are Never Forget Your Dream』はアルバム新曲。爽やかなイントロでSo君の優しい歌い出し。しかしここからが闇。お前らこんな曲作れんのかという壮大すぎる展開で、大サビで泣く。僕は泣いた。
その感動の余韻のままインスト曲。ここで終わらせてくれればいいのになんか後半から盛り上がっていき、必殺キラーチューン『Just Awake』へ。もうやめてくれ。
曲の展開にもついていけないのに曲間でもここまで振り回される。『In the End, the Choice is All Yours』なんてヤバすぎる。4分に6曲入っとるぞこれ。
全11曲、37分で収まってる。体感は2時間半、ビートルズのアンソロジーより長い。
インスト曲を除いて全部シングルカットできるくらいの完成度(と詰め込み)。散々もういいと言ったけど。飽きずに全編聴ける。こんなに展開が目まぐるしいのにくどくない。メタルコアってほとんど同じような曲調で差があるとしたら「バラードものかそうじゃないか」になってしまって少しでもラップとかハードロック要素を入れるとバッシングされるという厳しい世界なのにこのラスベガスは好きなだけいろんなジャンルを取り入れて綺麗にまとめ上げている。カレーと炒飯と焼きそばをワンプレートで出してんのにまとまってるみたいな奇跡。
そんなのラグビー部しか食えねぇよ普通。あいつらプロテインでそれ流し込むからな。
そんな学食のバカみたいな盛り合わせランチみたいなやつをペロリと平らげてんのにまたおかわりしたくなるようなアルバム。
食事に例えるのもうやめよう。わけわからん。