『踊ってない星野源』ばかのうた
昨年のガッキーの相手役で出演した某ドラマの大ヒットで音楽家としてだけでなく俳優としても一気に芸能界の階段を駆け上がっている星野源。ズルいぞ、そこ変われ。
その某ドラマの主題歌『恋』も大ヒット。”恋ダンス”は社会現象を起こした。
星野源は4th『YELLOW DANCER』からダンスやディスコ、R&B等のブラックミュージックへのアプローチを行なった。これが見事にハマって大ウケ。ハマったというより見事にJ-POPに落とし込めたという感じ。流石。
しかし初期の星野源にはここまでのポップさはなかった。
お前誰だ。踊らんのか。暗すぎる。これは流行らん 。俺は好き。
でも流行ってるからってそれが良いものだとも限らないし逆も然り。売れてるものが良いのなら世界で一番うまいラーメンはなんとやら。
そこで今回は2010年にリリースされた星野源ソロデビュー作『ばかのうた』を。
おちゃらけたアルバムタイトルのわりにはのっけから暗いし重いわ。
世界は ひとつじゃない
ああ そのまま 重なりあって
ぼくらは ひとつになれない
そのまま どこかにいこう
本人曰く「壮絶にフラれた」時に書いたそうな。人間、1つにはなれないけど重なりあうことはできるから無理すんなよ、ばらばらなままでいいじゃんみたいな歌(適当)。ええやんけ。
さて、話は少し逸れるがインストバンド「SAKEROCK」でギタリスト/ソングライターとして活動していた星野源がなぜシンガー/ソングライターとしてソロデビューしたのかというとあの日本が誇る細野晴臣氏の勧めによるものらしい。すげぇ。
今作は細野主宰のレーベルからリリースされており、楽曲制作にも参加している。
『ただいま』はその細野との共作(詞:星野/曲:細野)である。
このアルバムの中にはSAKEROCKの楽曲に歌詞をつけたものがある。
これがどっちのもよろしいのでぜひ両方聴いてほしい。
おじいさんは 歩いてゆく
おばあさんの 好きな場所なにもないし
なにもしない
ただ来てみただけさボケたふりしただけさ
(iTunesにはSAKEROCKの『穴を掘る』が無かったがこっちも良い)
SAKEROCKは自由に飛び跳ねるような社交的な音楽であるのに対して星野のソロではのんびりとゆったりしてどこか少し内向的な音楽になっている。
歌詞も日常に寄り添ったものとなっている。ただやけに夫婦目線の曲が多いのはなぜだ。どうした、お前まだ独身だろ。
先ほどの『老夫婦』もそうだったが、『グー』は一見恋人同士の平凡な日常を歌っているように見えるが、夫婦の最期を歌っている。気が早すぎ。まず結婚しろ。
見慣れた天井見て笑う
二人の布団は少し狭いな
寝起きの顔は
たぶん見れないけど
グーグーグーグーグーグーグー
お前の懐で
グーグーグーグーグーグーグー
少し眠ろう
『茶碗』もそう。この曲はベースが好き。
剥げた色のふちを 今日も口に運ぼう
ほら 長い長い日々を 今日も繋ごう
少し割れた底に こびりついた過去まで
飲み込んで よく噛んでね
二人で買った 同じ茶碗で
暗いテーマかもしれないけどその中というか過程にはきっと幸せもあって、後ろ向きかもしれないけど前向きな一面も垣間見える。微笑ましい。けど寂しさもある。
このように星野源は日常の風景や出来事を曲に書き写すのが上手い。それが少し残酷だったとしても。
感情を直接的に示さないことで聞き手によって様々な捉え方ができる。
それをやさしくも高らかに歌い上げる声も良い。曲も丁寧に作り込まれている。
踊ってない星野源も良いんじゃない?日曜の昼下がりにとっても合うのでおススメ。
朝起きて 目を開けて 隣に君が
腹へって 冷蔵庫 開けて二人は
ぼんやりとチューするの
アルバム制作のドキュメンタリーがYouTubeにあるのでこちらもどうぞ。
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- 発売日: 2010/06/23
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